待てども待てども夫は帰宅しない。
愛人と正妻と正妻の実兄という奇妙な3人が
そこに居ない夫の話を愛人から聞いている。
気付いたら愛人はわたしの事を名前で呼び
"優子さんは強いですね、何故そんなに?"
なんて言われてた(笑)
子供を産み育て子の親になれば強くなる。
子を守る為なら親はなんだってするだろ。
不意に玄関のドアが開いた…が…
一度閉じられまた開いた。
兄がひょこんと顔をだして
"びっくりさせたね。まぁ上がって。って俺が言うのもなんだけど…"
夫"あっ、はい"
"昨日優子がきて話を聞いて、今美樹さんから話を聞いたよ。とりあえずさ、もぅやっちゃった事取り返しつかないしどうにもならないしさ、何より子供たちの事考えてこれからの事話さなきゃと思うんだよね"
夫"あっ、はい"
わたし:どうするつもり?
夫"どう…ってえ?あ…"
わたし:何も考えてないの?離婚する?
夫"…しかないのかなぁと"
わたし:しかない?
夫"しか…離婚?"
わたし:離婚でよいのね?
夫"う…ん…。あっちょっといい?"
兄"どうした?"
夫"俺がさ前の会社首になった時にさ、俺超凹んでたのに、働けだの離婚するだの言われたんだよね。あれがあったから俺すげえ心痛めてこんな事になったんだよね"
わたし:で?働かない貴方の代わりにわたしが仕事増やして働いたよね?可哀想に貴方は悪くない、大丈夫よって言えばよかったの?突然解雇されて家のローンや学費、生活費どうするの?毎日部屋に閉じこもって仕事から帰ったわたしに飯は?飯は?しか言わない貴方に働けって言ったから心を病んで浮気をしなきゃいけなくなったんだ。
兄"…俺もさ嫁に時々離婚だ!って言われるけど…そっかそっか…浩司君は心痛めたんだ…失笑"
わたし:まず、眞子はこの事知っています。
夫"えっ!"
わたし:お家の鍵返してください
夫"え?"
わたし:当たり前でしょ、これから離婚しますってわたしは子供たちに話をしなきゃいけない。貴方が自由に自宅に出入り出来るわけないでしょ。離婚ってそういうことよ。それから、マンションのローンや子供たちへの養育費はきちんとしてください。
夫"それは、当然"
わたし:心配しながら眞子1人で待ってるの、わたしを。だから、早く鍵を返して。当座の荷物は明日にでもこちらにお持ちします。宅配ボックスなり使わせていただきますけど、美樹さんよいかな?
愛人"はい"
わたし:美樹さん、これで貴方もよい?
愛人"はい"
玄関に向かうわたしの後ろから兄が付いてきた。最後に振り返って夫に…
わたし:貴方わたしにごめんなさいくらい言えないのかしら?
夫"それは…申し訳なかったと"
わたし:それから…お隣の方から苦情がきてるみたいなの。わたしがお願いし美樹さんにお家に入れて頂いたの。彼女に怒ったり暴言や暴力はやめて。貴方には美樹さんしかいないのだから、彼女に今までしてきた鬼畜な行いを償い大事にしてください。
愛人が好きで好きでたまらないから離婚したい!くらい言ったら愛人も満足だったろう。
せめて土下座の一つくらい兄にできたら、兄は離婚を回避する方法を考えたかもしれない。
わたしに言われ"申し訳なかったと"しか言えない…情け無い。
更には偉そうに"わたしに離婚と言われて心が病み離婚する事になった"と言った(笑)。
後の家族会議でも、甲斐性もなければ善悪や分別、常識、全てに欠如した男だとはっきりとわかり、誰も離婚回避を口にしなかったことが幸い。
愛人には念のため再度確認していた。
わたし:離婚すると言う事、貴方はわたし達に慰謝料を払わねばならない。家のローンも養育費だって。今でさえ金がないと貴方から無心している夫で本当にいいの?大変なだけだよ?
愛人"はい"
わたし:貴方正気?大丈夫?だいぶ騙されてたのよ。
愛人"たぶん正気ではないです。でも一緒に居ます"
わたし:なら、わたしいらないからあげる。だけど返してこないでね。わたしにはわたしの守るべき娘たちがいてわたしは子供たちの事だけ考えます。だから、二度とわたし達を巻き込まないでねと。
"運転して帰れるか?"と兄。大丈夫。眞子が待ってるから。"何かあったらすぐ連絡しろ"
帰ると眞子は眠っていた。眞子の寝顔を見て友人に連絡をしていた。今夜は眠れないかなぁとマイスリーを飲もうとソファに座るとインターフォンが鳴った…0時を回った頃…インターフォンが鳴った。
さっき離婚をすると決めた相手が映ってる。
ため息しかでない。わたしから"離婚"と言われ心病んで四年も浮気をしていた男がいた。荷物を取りに来ただけかもしれない。インターフォンに出る気にならず、愛人美樹に電話をした。